第2章:“宇宙創生を解明する「インフレーション理論」”

ビッグバンの前段階、ビッグバンの火の玉が出来た謎を解くインフレーション理論

インフレーション宇宙創成の10のマイナス44乗(例えば10のマイナス4乗は0.0001)秒後に始まって、10のマイナス33乗秒後に終了、ビッグバンを起こした

“宇宙創成論”と言えば

“ビッグバン”の導因としての“インフレーション”を発見した佐藤勝彦先生

東京大学大学院理学系教授 ビッグバン宇宙国際研究センター長   佐藤 勝彦 氏 さとう かつひこ

1945年香川県生れ。67年京都大学理学部卒業。73年同大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学助手を経て、79年−80年には、デンマーク・ニールス・ボーア研究所客員教授を務める。82年東京大学助教授、90年教授に。また95年、文部省が世界に誇る研究機関をつくることを目的とした「卓越した拠点形成プログラム」の一プロジェクトとして、同大学に初期宇宙研究センターが設立され、そのセンター長として活躍。その後、同プロジェクトが5年間の期限付きのため、その引き継ぎ研究機関として、99年にビッグバン宇宙国際研究センターが開設され、同時にセンター長に就任。89年に井上学術賞、90年には仁科記念賞を受賞。主な著書に『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』(91年、同文書院)など多数。

先生はネット上でも数多くのインタビューをオープンにされ、自らの理論を解りやすく解説されています

少しだけ挙げても

東京大学:見えてきた「宇宙のはじまり」ビッグバン直前の一瞬を説く「インフレーション理論」

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/f_00066.html

宇宙と光のこと:佐藤勝彦 自然科学研究機構長 インタビュー(1)(2)

http://prc.nao.ac.jp/fukyu/cosmic-light/article/017.html

http://prc.nao.ac.jp/fukyu/cosmic-light/article/018_1.html

素粒子から宇宙を見る

https://www2.kek.jp/ja/newskek/2006/novdec/Satointerview.html

日経BPムック 宇宙が急速に膨張したのは真空にもエネルギーがあったから

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/rigakuru/nbp/research/11.html

JBジャーナル:佐藤 勝彦氏 ×石黒 和義 「私たちはどこからきて、どこへいくのか」を問い続けて

https://www.jbgroup.jp/link/interview/207-1.html

生命誌ジャーナル:理論と観測が明かす宇宙生成:(生命誌の権威・中村桂子先生との科学論議が楽しい)

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/053/talk_index.html

中でも下記at homeこだわりアカデミー教授対談の記事が詳しい

 (人間をも生み出した宇宙 その創成の謎に“インフレーション理論で迫る

https://www.athome-academy.jp/archive/space_earth/0000000243_all.html

 

数多いご著作の中から

“インフレーションの宇宙論 ビッグバンの前に何が起ったのか”

を中心に読んでみる

1.インフレーション理論に至る科学者の足跡

アインシュタインの静止宇宙モデル

 宇宙のポテンシャルエネルギーは空間を押し縮める力(引力)と空間を押し広げる力(斥力)を足したモノ

 斥力は“宇宙定数=宇宙項”と呼ばれるが、後に自ら否定した

 アインシュタインでさえ“膨張する宇宙”は考えて居なかった

 宇宙項:“物理のかぎしっぽ” http://hooktail.sub.jp/astronomy/cosmologicTerm/が詳しい

フリードマン 宇宙の曲率が負なら 膨張し続ける

 曲率がゼロなら ゆっくり膨張し続ける

 曲率が正なら 急激な膨張から収縮へ

ハッブル 遠方の銀河ほどより早く遠ざかる事を観測

 結果宇宙の加速膨張、“宇宙定数”が認められた

(赤方偏移=星が遠ざかっている証拠に波長が長くなって赤く見える)

 従って 宇宙のはじめは“点”だったか?

ガモフ “宇宙は火の玉からはじまった” マイクロ波背景放射の測定

 宇宙は火の玉として生まれ膨張していく過程で次第に温度が下がり、ガスが固まり、星が生まれ

銀河・銀河団が形成された

(こだわりアカデミーより)

“ビッグバン理論は、1948年にジョージ・ガモフらが提唱したもので、初期の宇宙は超高温、超高密度の火の玉状態であったとされます。その火の玉が膨張して、今のように果てしない大きさの宇宙ができたという理論です”

“火の玉がどうして出来たかの謎を説明するのがインフレーション理論です”

さて 佐藤博士などの “インフレーション理論”

生まれたての宇宙は、“真空のエネルギー”で強い“斥力”が働き

光速以上の指数関数的加速膨張(10の43乗倍)を起こした

宇宙創成の10のマイナス44乗秒後に始まって、10のマイナス33乗秒後に終了した一瞬のインフレーション、その間に宇宙は直径10のマイナス34cmから1p以上に急膨張)

 (宇宙年齢は137億年なのに、宇宙は1000億光年の先にまで広がっている)

 その際に宇宙の温度は急激に下がるが、潜熱による真空の“相転移”が起こり、

落差のエネルギーが膨大な熱のエネルギーに転化する

再熱化によって“火の玉”宇宙が誕生した

1.では インフレーションは何故起ったか?

“無からエネルギー生まれるマジック”と言われていますが“量子論”次元の世界で

正直私にはよく解りません

真空にも“ダーク・エネルギー”が有・無を“ゆらいでいる”この状態からトンネル効果で突然宇宙が生まれる

(こだわりアカデミーより)

“実はエネルギーを抜くだけ抜ききっても、振動、いわゆる「ゆらぎ」が残るのです。この「ゆらぎ」は、素粒子の生成と消滅が繰り返されることにより起きていて、物理的には消すことができません。いい換えれば、無と有の間をゆらいでいる状態ということです。その状態から「トンネル効果(※1)」で、突然パッと宇宙が生れたと考えられています”

“この生れたての宇宙は、真空のエネルギーを持っており、このエネルギーは急膨張する性質があります。急激に宇宙が大きくなるということは、それだけ密度が低くなり、温度が急冷することになります。その時、水が氷点以下になっても一時的に凍らず、水のまま持ちこたえる現象、いわゆる過冷却と同じ状態に陥ります。その間、膨大なエネルギーが潜熱(※2)として蓄えられます。水でしたら凍る時にその潜熱が吐き出されるわけですが、インフレーションでは真空の相転移(※3)によって莫大な熱エネルギーが解放され、ごくわずかだった宇宙が直径1cm以上もの火の玉宇宙になったのです”

1トンネル効果:

極めて薄いエネルギーの壁を、それより低いエネルギーを持った粒子が通り抜けてしまう現象。半導体はこの原理を利用してつくられている。

2潜熱:

物質が液化したり凍結したりする時に、その物質の状態の変化により解放される熱エネルギー。

3相転移:

固体、液体、気体のように物質の質的に異なった状態を相(固体相あるいは固相)といい、物質状態の移り変りを相転移という。

 

1.インフレーション理論は“ビッグバン理論”の難点を解決

アインシュタインの宇宙項の謎を立証した

“相転移”の概念で“4つの力”の枝分かれを論証した

ビッグバン以前の謎に迫ることで密度が無限大となる物理学的特異点を超えた

モノポール(単一の磁荷のみをもつ磁気単極子)を宇宙の彼方に吹き飛ばした

ビッグバン理論の難点“平坦性問題”(曲率がゼロに近いまま膨張した仮定が必要)を解決

 元々の宇宙が平坦でないどんな曲率を持っていたとしても急激な膨張で極端に引き伸ばされて平坦化され、宇宙の密度は自然に臨界密度にほぼ一致する値をとることになる。

“宇宙の地平線問題”(膨張する宇宙において宇宙の地平線を越えた二つの領域は物理的な相関を

もたない。にもかかわらず、宇宙背景放射は地平線の大きさを越えて一様であり、すなわち、

どの領域も同じ物理状態にある)

インフレーション宇宙論によると、宇宙創成のごく初期に物理的相関があった小領域が地平線を越えて急激に膨張したと仮定することで、この矛盾を解決すると考えた

宇宙が急速に膨張したのは真空にもエネルギーがあったから

佐藤先生が東大理学部のWEBに下記のように自ら解説されて居ます

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/rigakuru/nbp/research/11.html

137億年前に、地球上ではとても再現できないほどの高密度、高温度の火の玉のような状態から急激に膨張したというビッグバンによって、宇宙が始まったと考えられていることは広く知られている。「初期の宇宙は高密度かつ超高温だった」とするこの説は、1947年にジョージ・ガモフによって提唱され、後に「ビッグバン理論」と呼ばれた。60年代に入ってから、その根拠となる宇宙背景放射が観測されるようになって定説となった。

しかし、ビッグバンがなぜ起こったのかは、当時は誰も証明することができなかったのである。やはり宇宙の始めには「神の一撃」があったのではないかという説が、まことしやかにささやかれたこともあったほどである。

この「ビッグバン理論」は、いくつかの問題が指摘されていた。その問題に科学的根拠を持って回答を与えたのが、81年に佐藤が提唱した「指数関数的宇宙膨張モデル」、いわゆるインフレーション理論である。時を同じくして、米国のアラン・グースからも素粒子論の立場から同様の論文が発表され、このインフレーション理論は、佐藤とグースによるものとされている。

インフレーション理論とは、宇宙創生の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの間に、エネルギーの高い高温の真空の状態から低温の真空に相転移し、保持されていた真空のエネルギーが熱(転移熱)となって火の玉となり、ビッグバンを引き起こしたというものである。

我々が通常理解する真空とは、エネルギーや質量が存在しない状態である。しかし、実際には真空中では物質と反物質が生まれてはぶつかって消えていくことを繰り返し、エネルギーが変化することで「真空が揺らぐ」現象が起こるのである。この説は「真空の相転移」と言われ、佐藤はこの「真空の相転移」論をビッグバンに応用することで、「ビッグバン理論」の矛盾を説明することができるのではないかと考えたのである。

宇宙情報センターには下記の記事がありました

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/fluctuation.html

無のゆらぎから宇宙は生まれる

宇宙がどのようにして誕生したのか。もっとも素朴で、かつ、もっとも難しい問題のひとつです。宇宙の誕生についてはさまざまな説が唱えられていますが、主流の説のひとつに、「無のゆらぎ」から宇宙は生まれたとするものがあります。

無のゆらぎとは、無と有の状態が両方とも同時に、ある確率をもって存在している状態を指します。私たちの身近にあるものも、細かく分解して見ていけば、実はすべて確率的に存在しているに過ぎません。このような概念に基づく物理学を、量子論と呼びます。量子論は決して数学的なモデルではなく、実際に起きているさまざまな現象を説明できる物理学です。この量子論的な世界が、宇宙の始まりにあったと考えられているのです。

無から有の状態になった宇宙の卵は、またすぐ無へと戻るのがふつうですが、ある確率を持って無へと戻らず急激な膨張を始める宇宙があったと考えられます。それが、宇宙の始まりの瞬間です。ひとたび膨張を始めた宇宙は、その誕生直後に急激な膨張期、インフレーション期を迎えて、その長い長い歴史の第一歩を踏み出すのです。

1.物質の出来る過程

(こだわりアカデミーより)

すべての物質は、インフレーション時代につくられた莫大なエネルギーがもととなっています。ビッグバン以後、宇宙の膨張とともに素粒子ができ、それが陽子や中性子に、さらに原子へと、物質生成が進んでいきました。その間、それらの粒子が、光を通さないくらい非常に濃密な状態で宇宙をヤミクモに飛び回っていました。それが、しかるべきところに落ち着き、宇宙の見通しが良くなったのです。これを「宇宙の晴れ上がり」と呼び、だいたい宇宙創成後、30万年頃のことと考えられています。そして星ができ、銀河や銀河団が形成され、私達人間などの生物がつくられていったのです。

現在の宇宙は創成からだいたい140億年経っているとされていますが、未だに膨張し続けています。

山賀進先生は元高校地学の先生だそうですが、

下記の力作webを拝見して、さすが専門家、素人の私がこのような“心覚え”を公開して良いモノか、恥ずかしくなりました(あくまで私自身の惚け防止のために書いていますので悪しからず)

われわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのか、そして、われわれは何者か−宇宙・地球・人類−より)

https://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/busshitsu-1.htm#物質の起源より

一部引用させていただきます

ビッグバン直後の高密度、高エネルギー状態の宇宙では粒子・反粒子は対生成、対消滅を繰り返していたらしい。当然、粒子と反粒子は同数あったことになる。ところが、宇宙が膨張して密度が小さくなると、対消滅したが最後、対生成がほとんどできなくなってくる。

では、なぜわれわれの物質世界が残っているのだろう。これについては、粒子と反粒子の反応法則にごくわずかの違いがあり(CPの破れ)、その差の分だけ粒子が残ったという考えが有力である。さらに、日本の小林、益川氏によって、クオークが6種類以上あれば、このCPの破れが自然に生ずるということが指摘されている。

ビッグバンから少したつと素粒子ができはじめる。少したつといっても10-11秒(10ps(ピコ秒))という、ほとんど瞬間といってもいいくらいのことである。宇宙の温度はまだ1015K1000兆K)もある。このころの存在していた素粒子は、レプトン、クォーク、グルーオン、光子などである。

さらにビッグバンから10-4秒(1万分の1秒)くらいたつと、宇宙の温度は1012K(1兆K)くらいになり、陽子(水素の原子核でもある)や中性子もできる。そして、ビッグバンから1分後、宇宙の温度は109K(10億K)まで下がり(!)、ヘリウム、リチウム、ベリリウムといった軽い原子の原子核も存在できるようになる。

ビッグバンから数十万年後、宇宙はさらに膨張を続け、そのために温度は数千Kまで下がる。すると、原子核が電子を捉えて電気的に中性な原子を作ることができるようになる。ようするに、ふつうの物質(のもと)ができる。量的には水素原子がもっとも多く、ついでヘリウムの原子である。

すると、それまで電子などの荷電粒子と反応していた光子は、物質とほとんど反応しなくなる。いわゆる宇宙の晴れ上がりである。現在の約3Kの温度に相当する宇宙背景マイクロ波放射は、宇宙が数千Kであったこの時代の名残りといわれている。

水素原子やヘリウム原子は宇宙空間にまったく均一・一様に分布しているのではない。どこかにちょっと密度が高い場所、どこかには密度が低い場所といったゆらぎができる。密度の高い場所はその質量による引力(万有引力)によって、まわりの水素原子やヘリウム原子を集め、ますます密度が高くなる。こうして巨大なガスの塊ができる。原始銀河の誕生である。

1.マルチバース理論

“自然定数”が少しでも違っていれば我々の宇宙は存在しない、

我々は余りにできすぎた(神の手のうちにあるような)宇宙に住んでいる

何故自然定数がこの様な値になっているのか?

宇宙が子宇宙、孫宇宙と無数に生まれるならば、それぞれの宇宙が持つ物理法則も無限に存在する

無数にある宇宙の中で我々の宇宙がたまたま、人間が生まれるのに都合の良い宇宙だったに

過ぎなかったのだろうか?

宇宙のワームホールから新しい宇宙がインフレーションを起こし子宇宙、孫宇宙となる(親子の宇宙は別次元の存在として因果関係が断ち切られる)

日経サイエンス:我々と別の宇宙は本当にある 物理学の最新理論 宇宙論研究者の野村泰紀教授に聞く

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO19265380W7A720C1000000/

1.量子論 (とても難しいので未整理です)

1.検証

インフレーションの証拠を追って、電波で遠くを見る

COBE(宇宙背景放射探査機)FIRAS(遠赤外絶対分光測光計)

DIRBE(拡散赤外背景放射実験装置)DMR(マイクロ波差分装置)

WMAP(ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機)                             

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